時代も国境も超えて。

俺は漫画とかアニメ、日本のサブカルが好きなんだと話すと、
「これ知ってる?」とiPhone5の画面をその日一緒にしゃぶしゃぶを食べに行った韓国人の男の友達に見せられた。
サイバーパンクとかグロテスクなものが好きなんだ」と笑って言っていたのは本当らしく、ジャケットからしてグロい…。
「し、知らない。」
全く知らなかった。あとで調べてみると1980年代の劇場公開作品だけど、多少なりともアニメ好きの自覚がある自分ですら全く知らなかったし普通の日本人は知らないと思う。ていうか知ってたらヒくようなマイナーかつ濃い趣味の世界だった。笑

彼は日本語は話せないけど父親が在日韓国人で、それがきっかけで日本のアニメとか映画が好きになったらしく、「ジョゼと虎と魚たち」が好きっていうような部分では大いに盛り上がれたけど、一番好きな監督は北野たけしでアウトレイジは大好きだ!とかやくざものが好きだ!の部分では「お、おぅ。」となるしかなかった。

これは外国人と話していて全然珍しいことではなくて、ここ5年くらいのアニメはほとんど見てるよ!と豪語する中国人とか珍しくない。
個人的な好みとして本当によく練られた脚本、構成のSFとかシリアスめな作品とか、反対に音楽とか映像表現を巧く使ってアニメーションとしての強みを活かすほのぼのした作品が好きだから、(自分から見たら)掃いて捨てるほど量産される典型的なラノベ作品が好きだっていう友達の意見は面白いなーと普段から感じてる。

アジアの人達の日本のアニメ、漫画、音楽、映画コンテンツへの情熱は海外に来て本当に実感する。
フランスとかのヨーロッパでも人気が高いけど、あれはヨーロッパの国には元から文学や演劇、絵画や建築といった芸術全般の下地があった上で、もののけ姫のような勧善懲悪の安直なストーリーに収まらないメッセージ性やアニメーションとしての質の高さを文化的な目線から「質の高い物」として評価されているなーと。

大げさに言うと、フランス人からしたらハヤオ・ミヤザキ作品はドストエフスキーシェークスピアゴダールと同じ視点で評価されているんじゃないのかなと。

翻ってアジアの国からしたアニメ文化はもう少し大衆娯楽的な要素が強くて、イノセンスの世界観に深く感銘して…や、AKIRAのストーリーにおけるほにゃららの〜みたいなことよりもワンピースやナルトが受けているっていう意味では日本の消費市場と似た印象で。(もちろん個人差はあるし先の韓国人の友達とは攻殻機動隊について熱く語れた。)

その中で思ったのは、彼らの国に日本やアメリカのような「コンテンツ」がかなり希薄だからなんだっていうことで、それは歴史的背景や経済、人口規模、文化や言語とかそれぞれの事情によるんだろうけど、やっぱり日本語っていう単一の言語で1億2000万人っていう市場を持つ日本のコンテンツの力は国内だけ見ているとCDが売れないとか映画館に人が来なくなったとかでネガティブな見方がされがちだけど、そもそも論でここまでコンテンツを作れる国が一体どれだけあるんだろうと。

そういう稀有な中で発達してきた日本のコンテンツがインターネットによって世界中からアクセスが出来るようになると、1980年代の超マイナーな劇場作品も、ガンダムシリーズも、けいおん!も全て同じ「アニメ」っていう括りで見られるから、時代も国境も超えて自分の好きな作品を掘り下げていける世の中なんだなーと。


アニメに、日本に限らずそれは他のコンテンツでも同じで、特に音楽なんてYouTubeに上がっていればはっぴいえんどBeatlesも嵐もOasisもAKBも時代も言葉も関係なく好きなものを聴けるわけで。

音楽でも映画でも漫画でも、その作品がどの時代に発表されて、それはどういう影響を受けて作られ、その後どんな作品に関わっていくのかっていう年代史的な理解っていうのは大切だと思うけど、それはある程度詳しくなったら各々やればいいだけで、最初の入り口が広がって今までは自分の国のその時しか流れていないようなテレビやラジオから得るしかなかったコンテンツが自分の趣味趣向に合わせて選択できるのはいいことだと思う。

あとはそれを上手く収益に繋げたり、キュレーションしたりするシステムがまだ追いついていないだけで、あともう5年、10年もすればネットにさえ繋がればどこの国のいつの時代の作品でも消費できると思うと楽しみだなーと。